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バックパッカーに憧れて

BPスタイルのアジア旅行記と格安航空券や旅の情報

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下川裕治さんの新刊『ディープすぎるユーラシア縦断鉄道旅行』を読んでみました

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ユーラシア大陸ーー。

ヨーロッパとアジアをあわせた六大陸のなかで、一番大きな大陸だ。そのユーラシア大陸をインドのデリーからイギリスのロンドンまでを乗り合いバスで旅をした、今や旅人のバイブルを超えたレジェンド『深夜特急』は、旅行作家・沢木耕太郎さんの著書としてあまりにも有名である。また、その旅のルートと似たような企画もテレビ番組であった。タレントの有吉弘行さんがかつてコンビを組んでいた「猿岩石」も、香港からヒッチハイクでロンドンを目指すという内容だった。それらを見ては、どこか遠くの出来事のように感じると共に、心の中で憧れを抱き大人になった。

 

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とっくに大人になった僕は、とある一冊の本と出会った。それは2011年に発売された旅行作家の下川裕治さんの著書『世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア横断2万キロ』という本だった。ユーラシア大陸の東端駅から西端駅までを列車で旅する内容だ。それまでに挙げたユーラシア大陸横断は、あまりにも有名で、多くの旅人が憧れ真似する人も少なくなかったが、下川さんのように列車で旅する人は耳にすることが多くなく、面白いと感じたものだった。その下川さんが 、次は南北路線かな……という漠然とした思いがきっかけでできた著書が、2016年6月に発売された『ディープすぎるユーラシア縦断鉄道旅行』だ。シンガポールからロシアへ抜ける過酷な列車旅。下川さん、御年60歳を超えてもなお過酷な旅をする姿を重ね合わせると、とても読み応えのある一冊であった。

 

ディープすぎるユーラシア縦断鉄道旅行 (中経の文庫)

ディープすぎるユーラシア縦断鉄道旅行 (中経の文庫)

 

 

第1章:シンガポールからバンコクへ

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旅はユーラシア大陸の最南端、シンガポールから始まりマレーシアへと続くが、この辺りのくだりは下川ファンなら『週末シンガポール・マレーシアでちょっと南国気分』などの著書でお馴染みの内容だ。初代シンガポール駅の話しに始まり、イギリス植民地、そしてマレー、華人、インド系と民族の話しから、当時のシンガポールのリーダー、リークアンユーの政策へと続く。

そして旅はタンピン駅で下車し、車でマラッカへ向かおうとするが、夜の10時半でバスが無い試練が待っていた。どうして列車で来たの?という地元の人とのやり取りから、マレー鉄道への話しへと続く。下川さんは幾度となくシンガポールからバスや鉄道でマレーシアへの入国は経験済みのはずで、バスの方が便利なことは知っているはずだが、鉄道旅行が題材だから、どうしてもタンピン駅のようなやり取りになってしまう。

第2章:バンコクからダウェイへ

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ペナンで1泊した下川さんはタイのバンコクへ入った。ここで下川さん、ひとつの悩みができる。それはユーラシア大陸の鉄道が完全に繋がっていないことだった。カンボジア国境のアランプラテーまでは線路が延びていたがその先はない。

バンコクから北へ向かうルートもあった。しかし列車でチェンマイまでは行けるが、その先がなかった。いや、ノーンカイからメコン川を渡り、ラオスに入るルートもある。しかし、ノーンカイから3.5キロ先のタナレーンで線路は切れている。

もうひとつルートがある。バンコクから西へ向かうルートだ。カンチャナブリーを通り、ナムトックまで向かうルートだ。しかし、いまはカンチャナブリーから車でミャンマーに入り、ミャンマーの鉄道に乗るしかない。などなど、幾つかのルートと、どうして線路が途切れているのかなど、その歴史と国々の社会情勢を組み込みながら、下川流に解説をしてくれるところは、国境オタクに限らず読み応えがある。僕は本を片手にグーグルマップを開いて楽しんだ部分だ。

さて、下川さんが選択したルートは結局カンチャナブリーだったが、この第2章の楽しいところは、タイとの国境の話しと、ミャンマーに入ってからだ。下川さんの著書は自身が国境好きということもあってか、文章が踊っているようにいつも感じる。幾度となく国境越えを体験しているはずなのに、いつも新鮮な文章を書いてくれる下川さんには恐れ入りましたの一言。

第3章:ダウェイからムセへ

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第3章では、ミャンマー列車で1680キロを移動するが、そのミャンマー列車の揺れの激しさと窓際の恐怖を下川流で痛快に描かれている。そして列車のシートでやられたダニ。刺された背中を鏡に映すと、十数カ所やられていた。下川さんは20年前にも同じシチュエーションでダニに刺されたそうだが、その時出版した『アジア極楽旅行』という著書のなかでこう書いたらしい。


ーー東南アジアでは列車の一等の席に座るな。

実際に読んでもらえると分かるが、ダニのくだりに随分とページをさいている。同行したカメラマンの中田浩資さんによるダニに刺された証拠写真も載っている。下川さんはどうもミャンマー列車でのダニの思い入れが強いようで、可哀想な反面、笑ってしまう内容になっている。

さて、列車旅はヤンゴン、そしてマンダレーへと続く。僕はバスで移動をしたが、ヤンゴンとマンダレーは昨年(2016年)旅した場所だけに思い入れのある内容だった。好きな作家の旅を追う旅もあると思うが、下川さんのあしあとを巡る旅も僕のなかではある。


下川さんの旅はその後、マンダレーからシーポー、そして途中トラックの荷台に乗ってラショーへと続くが、以前のミャンマーではこうはいかなかったと話す。それは、ミャンマーの民主化だった。この体験を下川さんは言う。

トラックの荷台に乗って知る自由というのもあるようだった。

格好いい。下川さんのこういう表現が好きだ。そして中田さんの撮影したラショーの街がなんともいえない。行ってみたいという気持ちになる写真だった。

 

ディープすぎるユーラシア縦断鉄道旅行 (中経の文庫)

ディープすぎるユーラシア縦断鉄道旅行 (中経の文庫)

 

 

第4章:瑞麗から北京へ

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今回の著書の見どころは、もしかしたら第4章の茶葉の話しかもしれない。それは下川さん自身もあとがきで語っているが、列車旅に茶葉の道をオーバーラップした、新しい試みだった。うまく読者に伝わるかどうか……。印刷直前まで悩んだそうだ。

その茶葉のくだりは、中国茶のエキスパート、案内役の須賀さんと共に長沙の街で展開される。ダウェイから北上してきた列車旅とミャンマーから始まる茶の世界を重ね合わせる内容。そしてシルクロードへと。下川さんの著書は単なる旅行記ではなく、その歴史を重ね合わせる作品が多いが、この章は特にその色合いが強い。僕は茶葉に関しては全くの無知なので、この章は旅行記というより、もはや勉強の部類になった。分からない単語も多く、ネットで調べては、本とパソコンの画面を行き来する。

うまく読者に伝わるかどうか……。

もちろん伝わった読者はいると思うが、読んだそのまま伝わるだけが本ではない。時には作家の表現に、自ら勉強して追いつき理解が必要なのも本である。それが、今回の作品の第4章だと思う。

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第5章:北京からスフバートルへ

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茶葉のページにボリュームをさいた第4章とは一変、肩の力が抜けた列車旅の内容になっているのが第5章だ。旅は中国の北京からモンゴルのウランバートル、そしてロシア国境のスフバートルへと向かう。

僕は中国へ行ったことがないから、ここから先はその国の空気を思い出して本を読むことはできない。下川さんの表現で、僕も一緒に旅をすることになる。だが、最近モンゴルを旅してきた僕の知人がいた。その知人は寒い場所が苦手な人だったが、格安航空券に目がくらみ、ついついネットの決済ボタンを押してしまった旅の中毒者だった。その知人の話しを重ね合わせると、この時期のモンゴルを旅するということは、こういうことなのかと、作品に親近感が湧いてきた。氷点下10℃、風速20m。寒風のホームに降り、物売りのおばちゃんから食糧を買う下川さん。その姿を想像すると、僕も下川さんのあしあとを巡る中国からモンゴルへ向かう列車旅をしてみたいと思った。

また、この章でも歴史は学べ、独立、ソ連、中国といった、モンゴルの情勢と国や人々の変化が学べた。

第6章:キャフタからムルマンスクへ

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旅はいよいよ最終章に入る。モンゴルとロシアの間には、列車と道路というふたつの国境がある。下川さんはスフバートル駅からタクシーで道の国境を選ぶ。それは、最後のシルクロードを辿ってみる旅。茶を運んだ道だった。今回の作品で力が入った茶葉とシルクロードの話しが最終章で再び登場してくる。旅の終わりと同様に茶葉の話しも集大成となる。

そしてロシアを旅するということ。東南アジアのような自由な旅ができないのがロシアだということは、行ったことのない僕でも承知していた。しかし、2015年から緩和され、簡単にビザが受け取れるようになったそうだ。パッケージツアーの人には関係のない話しかもしれないが、行き先を自由に決めることができる、気まぐれな旅人には画期的な話しを第6章で知ることになる。

旅好きな友人との会話でロシアが出ると、必ずと言っていいほど「ビザがねぇ……」という話しになるが、緩和の背景にはロシアの景気の悪化があるようだ。

さて、この章の列車内の話しで面白かったのは、お酒との付き合い方だ。あまり詳しく書くとネタバレになるので控えるが、どうやらロシアの列車は禁酒らしく、それでも飲みたい下川さんとカメラマンの中田さんがとった行動とは……? クスッと笑える内容になっているので、ぜひ読んでもらいたい。P324からだ。

そして旅の終着駅。ムルマンスクに着いた下川さんだったが、本当にここが最北端の駅なのか? 安堵する下川さんの左手には、ビールを片手にオーロラを待つ姿が印象的だった。

まとめ

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今回読んだ『ディープすぎるユーラシア縦断鉄道旅行』は、そのルートからちょっとは想像できるが、あとがきも含めて約380ページもあり大作だった。いつもの週末シリーズとはわけが違った。そして僕にとっては馴染みのある東南アジアから、中国、モンゴル、ロシアへと未知な国へと下川さんが本のなかで旅に連れだしてくれた。そのなかで知った茶葉の道と歴史。下川さんに出会わなければ、おそらく知ることのなかった旅だった。そして旅は実際にするだけではなく、本のなかで連れて行ってくれる旅もあると知った。

最近は自らが実際にする旅に追われていた気がする。しばらく離れていた作家の旅を吸収することも必要な気がする。そしてまた旅に出る。旅が好きな身にとっては、その繰り返しのような気がする。

また、余談だが、今回の下川さんの作品を読んでいると、ミャンマーを旅する本を書きたいんじゃないかなと思った。おそらく週末シリーズあたりが読みやすくていいんじゃないかと思うが、下川さん、どうでしょう? 僕はぜひ『週末ミャンマーでちょっとほにゃらら……』なんていう作品を読んでみたいのだ。

ディープすぎるユーラシア縦断鉄道旅行 (中経の文庫)

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週末シンガポール・マレーシアでちょっと南国気分 (朝日文庫)

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世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア横断2万キロ (新潮文庫)

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