台湾からクアラルンプールを経由して、ベトナムのホーチミンへ移動してきた。国が変われば景色も匂いも変わる。そしてテンションも。ということで、ここホーチミンでは、3日間の滞在となる。まずは街へ向けて出発する。
タンソンニャット空港からバスで移動
2014.05.03(5日目)
クアラルンプールを朝の7時に出発したエアアジアAK520便は、約2時間後にホーチミンのタンソンニャット空港に着いた。空港の外に出ると思っていたより閑散としていて、ベトナム・ホーチミンの日常はこれから始まろうとしている感じだ。
ネットでベトナム旅行記を読んでいると、「空港を出るとタクシーの運転手が沢山声を掛けてきてくる」「料金をふっかけてくる」などの文章を読んでいたのでどんな奴らが声を掛けてくるのか期待をしていたのだが、僕に声を掛けてきたのはたった一人だけ。しかもおとなしそうな人で、やんわり断るとすぐに何処かへ行ってしまった。ベトナムの洗礼を受けようと密かに期待をしていたのだが、肩すかしを喰らった格好だ。
◇安宿街の近くまで行く「べンタイン市場」へのバス乗場は空港を出たら正面右手の152番。 バス料金:5000ドン(約25円)
すでに152番のバスは停車している。先払いのはずの料金を支払おうと思っていたのだが、運転手が「とりあえず席に座って」みたいな事を言っている。乗車する時に5人の白人グループと一緒になった。「まとめて払うのか?僕の分まで?」
どう見ても一緒には見えないとは思うのだが。
ベンタイン市場に到着
◇べンタイン市場前のバスターミナル。簡素な作りだが、思ったより綺麗だ
バスは約30分後にべンタイン市場前に着いた。車窓から見る景色はそれは刺激的だった。去年見たタイとは比較にならない数のバイク。けたたましいクラクション。しかし、スピードはゆっくりと。
景色は台湾からベトナムへ。東南アジアに来たんだと、これだけで実感できた。僕はタイの幻想を求めていたのだ。台湾では得られなかった高揚感を車中で得たのだ。僕は東南アジアが肌に合うのだろうか。
◇背景には高層ビル。ホーチミンは栄えていることをこの旅で知る
◇風景が台湾とは一変。国が違えば配色も違う
べンタイン市場前でバスを降りた僕は安宿街のあるデタム通りへ歩いた。実はバスを降りる時、お金の払い方がよく分からずそのまま降りてしまった。いわゆる無銭乗車だ。後日分かった事だが、運賃は先払いで間違いないと思う。
グエンタイホック通りとファングーラオ通りの交差点に差し掛かると、バインミーのお店が見えた。バインミーとは長さ20cm程のバケットにパテを塗り、野菜、肉、魚醤を挟んだ食べ物だ。これはフランス植民地支配を受けた影響の食べ物で、庶民のファストフードと言っていいだろう。
深夜の移動で何も口にしていなかった僕は迷わず購入することに。口にした瞬間魚醤の香りが広がり、胡瓜をはじめとする野菜とバケットの食感、そして玉子の風味が一度に迫ってくる感じだ。感想は「うまい!」の一言。僕には多少サイズが大きいが、空腹を差し引いてもペロリと平らげてしまった。
バインミー:15000ドン
僕はバインミー屋の向かいの公園で食していた。すると幾人もの靴磨き屋が寄ってきた。僕はここからベトナムの洗礼を受けることになったのだ。とても楽しみな一日が始まりそうな予感がした。
まずはレストランでビールを飲む

朝の10時。僕はデタム通り近くのレストランでビールを飲んでいた。夜中の移動で実質これが晩酌みたいなものだ。睡眠不足に冷たいビールがとても体に染み渡る。ベトナムでビールと言えば333(バーバーバー)が有名だと思うが、僕が飲んでいるビールは地元ベトナムのサイゴンだ。調べるとサイゴンビールには三種類あった。グリーンサイゴン、レッドサイゴン、サイゴンスペシャルである。値段はグリーンから15,000ドン、16,000ドン、スペシャルが一番高く18,000ドン。肝心の味の方は値段が上がるにつれ美味さも上がる。一番安いグリーンはコクも香りも物足りなく感じた。

ビアジョッキを片手に僕の隣では靴磨きの少年が地面に座っている。この少年、ただ座っているだけではない。僕の靴を磨きお金を貰おうとしている。いわゆる靴磨きの商売なのだが、勝手に磨き出すのでタチが悪い。しかし「僕と君は友達」「僕はマフィアだ」など愛敬のある言葉をたまに挟むから憎めない。しかし何度断っても勝手に靴を磨き出す始末なのだ。バインミーを食べていた公園でも別の靴磨き少年が代わる代わる寄ってきたのだが、これがベトナムの洗礼なのか。

- カーム (ありがとう)調べるとカームオンだと思うのだが、教わったのはカームだ。
- バーンテンラッジー(お名前は?)会話していたら自然とこの言葉になりました。
- ヘーンティワゾーイ(NOマネー)調べるとKhông có tiền なのだが、少年が言うにはNO MONEY だとか。誰か分かる人はいるだろうか? しかし「ありがとう」「お名前は?」までは有りがちだが、まさかNOマネーを教えてもらうとは。彼の生活の現状を物語っていることなのか。
ここでひとつ考えた。逆の立場で日本語を3個教えてあげるとしたらどんな日本語を教えてあげようか。
- 「ありがとう」一番用途は高いはずだ。
- 「おはよう」挨拶は重要だ。
最後のひとつはなんだろう。「おやすみ」などの挨拶文か。男同士なら下ネタや女を口説く台詞でもよかろう。はたまた日本で流行っている一発ギャグか。あなたならどうしますか?
デタム通りに宿泊

ホーチミンでお世話になった宿は、デタム通りの一本東側の小道にある「TiTi」だ。この宿は色々な人の旅行記blogでも見かける宿だ。客の対応は女性で、日本語が少々できる。僕はこの宿で一番安い部屋に宿泊したが、階段で5階というとてもしんどい階層を選んでしまった。しかし、部屋はとても綺麗でWi-Fiも完璧。体力に自信のある方にはぜひおすすめしたい。
ベトナムの宿泊施設は一般的にチェックイン時、パスポートを預けるシステム。これをチェックアウト時に宿側も宿泊者も忘れる人がいるみたいなので要注意だ。僕は紙に大きく「パスポート!」と書いて部屋に置いていた。そのチェックアウト時のことだった。料金の支払いを済ませようと財布を見ると、飛行場までのバス代を除いた手持ちのドンが足りなくなってしまった。日本円にして約700円。近くで両替してきたい意向を伝えると、日本円での支払いが可能とのこと。僕は手数料込みと思い1,000円を渡したのであった。(お釣りは無いと思われる)
◇シャワーの水圧はまずまず。水温はバッチリです!
◇エアコンの効き具合も大丈夫。一応部屋にはファンも付いている。ちなみに部屋で喫煙OKです
ROOM FOR RENT TiTi
料金:440,000ドン(シングル/2泊)
設備:FreeWi-Fi、エアコン、ファン付、ホットシャワー&トイレは室内。
テレビ付、冷蔵庫付
感想:階段で5階がしんどい。最安の部屋を選ばなければ日当たりの良いベランダ付の部屋もある。日本円での支払い可。
その他:宿泊予約サイトへの掲載なし。
屋台で夕食
ベッドで横になり、目が覚めたら夕方だった。慣れない夜中の移動で身体は疲れていた。ベトナム戦争の歴史を知ることができる戦争証跡博物館や、ポニーが走るフートー競馬場に行きたかったが、睡魔に負けてしまった。とりあえず宿を出て、早めの夕食をファングーラオ通りの屋台で食べた。日本語で言うところの「豚肉定食」だ。豚肉のカリカリした食感が美味しかった。料金は30,000ドン。ライスの上に豚肉を載せ、付け合わせのインゲンを辛味ソースと混ぜ合わせて食べた。とても美味しかったが、スープは青臭くて苦手な味だった。
ホーチミンで散歩

食事を終えると、問屋街を歩いてサイゴン川の方へ向かった。
川に到着したがどうやらサイゴン川ではなく、サイゴン川に合流する川みたいだ。水辺には人が集まる。のんびりとした川辺の空気と夕景を眺めていたら、疲れが少しとれた気がした。


食品の店舗は、朝と夕の1日2度の賑わいを見せる。

ベトナムはかつてフランスの統治下だったため、味わい溢れる建物が今も残る。特に夜はそれらの建物に照明がプラスされ、美しさが増す。
ホーチミンのクラブ
さて、突然だが僕は酒と音楽が好きだ。酒と音楽と言えばクラブだ。ベトナム社会主義国のクラブを覗いてみようとネットで調べたアポカリプスへ向かった。このアポカリプスは1991年オープンの老舗のクラブらしい。入場料はないので、そのまま店内へ進んだ。しかし店内に入ると閑散としていた。賑わいの時間には早すぎたようだ。流れる曲は、ずっとマイケルジャクソンのみ。DJは見当たらなくおそらくCD。数少ない客はモニターに流れているサッカーの試合を見ている。僕はテンションが上がらず缶ビールを一本飲んで出てしまった。
ホーチミンは綺麗だ。居心地は良いが思ったより都会だ。ハノイやフエ、ホイアンやニャチャンなど他の街に興味が湧いてきた。ベトナムコーヒーを飲みながらそんな事を思った夜だった。

◇移動販売のベトナムコーヒー屋
フォーの人気店

◇牛肉フォーと333ビール1本:70,000ドン
べンタイン市場の近くでマッサージを受けたあと、お腹が空いたのでフォーを食べることにした。入店したのはファングーラオ通りを西へ直進、デタム通りも越えてしばらく歩いた左手角の「フォー・クイン」。後から分かったのだが人気店とのこと。頼んだのは牛肉のフォーで、333のビールも1本飲んだ。料金は合わせて70,000ドン。フォーはライムを絞ったり、もやし、ハーブ、バジルなどを載せて自分好みの味にできた。肉は薄切りで臭みがなく美味しかった。特にスープが美味しい。外は暑くても温かいスープは心が落ち着く。メニューは他にビーフシチューのフォーがあり、これをフランスパンで食べるのが美味しいらしい。次回来た時にはぜひ食べてみたい一品である。
◇ファングーラオ通りの一本南、ブイヴィエン通りは路上が居酒屋。賑やかな光景を横目に僕は宿へ帰る
ホーチミン観光
日付は明けて2014.05.04旅の6日目。今日もホーチミンは朝から快晴だ。朝食にバインミーとコーヒーを買って、泊まった宿の前の公園で食べた。今日は昨日と違って誰も寄ってこない。静かな朝食だ。食べ終えると街を歩いた。歩けば東洋のパリに出会う。それがホーチミンである。まずはグエンフエ通りの北正面にある豪華な庁舎、人民委員会庁舎からみる。観光客に人気の撮影スポットは景色を見ればわかる。
続いては聖母マリア教会に来た。この教会は、200年以上前にマルセイユから運ばれたレンガで建てられたらしい。存在感があって美しい。青い空にも映える。
そんな教会の向かいにあるのが、ホーチミンで有名な中央郵便局。フランス統治時代に郵便や電信施設として1891年に建てられたとか。かつてサイゴンが東洋のパリと言われた名残を味わうことができる。
サクッと有名どころを見ると、昼間からカフェでビールをたくさん飲むと決め込んだ。グラスを片手にネットをしたり、ウトウトと昼寝をしたり。今日は日曜日。まさに過ごし方が休日。なんだかベトナムでは何もしたくない気分だった。
路地裏のフォー
路地裏に惹かれて入ってみると、路上で食べるフォーの店を発見。よく見るとおばちゃんが寸胴で作っているではないか。僕はこういう店にそそられる。
迷わず席に腰を下ろすと、この後後悔する羽目になる。一見美味しそうに見える魚が入ったフォーだが、生臭くて食えたもんじゃない。無理やり途中まで食べて店を後にした。ちなみに腹は壊していない。
デタム通りのレストラン
デタム通りのレストランでは海老の春巻きも食べた。僕は海老好きなので期待したが、想像通りの味で特別感動はしなかった。ちなみに料金は、海老の春巻きと333ビール 2本で180,000ドン。
今日は感動する食べ物にも出会わず気が乗ってこない。振り返れば旅立つ少し前から気が落ちていた。そんな調子だから夜のブイヴィエン通りの賑やかしい音楽にも気が乗らないどころか逆に滅入ってしまい、公園の地面で缶ビールを煽っている方が気が楽だった。