9月18日:旅の初日は香港
午前4時に起床しなければいけないのに、寝床についたのは0時を回ってしまった。その上、近所の野良猫同士が我が家の前で秘め事を始めてしまい、死んでしまうんじゃないかというくらいの物凄い雄叫びが気になって結局深い眠りにつくことができなかった。
揉める搭乗客
それならば飛行機で寝ればいいかとなるが、申し訳ない程度のリクライニングとエンジン音に、飛行機で眠ることができない身だった。どちらかと言うと、僕は旅に向かない人間だと思う。それに加えて今回のフライトは、前の座席に赤ちゃん連れの夫婦が座った。赤ちゃんは泣くのが仕事のうえ、フライト中はそのほとんどの時間で泣いているもの。過去の体験から覚悟はした。
「これはいよいよ寝れないな」
しかし、今回の赤ちゃんはほとんど泣かない。逆に大丈夫かなと思うほどだった。その静かな赤ちゃんに代わって、吠えていたのが若いお母さんだった。聞き耳をたててみると、一番高い料金プランで購入したのに、座席指定がされていないと訴えている。チェックインカウンターで座席を聞かれたのを不思議に思ったがそのまま搭乗し、旦那さんと通路を挟んだ隣同士にご立腹のようだった。
航空会社はバニラエアだ。バニラエアの料金プランは「コミコミ」、「シンプル」、「わくわく」の3種類あり、お母さんが話している一番高い料金プランは「コミコミ」と思われる。そのコミコミプランは座席指定がスタンダードなら無料で、荷物の預けも20kgまでなら無料。その他便や日付の変更が500円から可能であり、一番安い「わくわく」と比べるとサービスが良く、融通も効いたプランだった。
しかし、お母さんが話す「座席を指定したいから、一番高い料金プランにした」というセリフには首を傾げたくなった。それは他のプランでも500円から座席指定はできるからだ。僕なら一番安いプランの「わくわく」で購入し、500円払って座席を指定するけどな……と考えていると、お母さんはシステムエラーを疑いはじめていた。
その様子を旦那さんに英語で話すお母さん。旦那さんは外国人だった。その旦那さんは静かに話しを聞き入っていたが、お母さんからは日本人の雰囲気が消えていた。これはアメリカナイズされたのか、母強しの結果なのか。お母さんの勘違いか、システムエラーなのか分からないが、逞しさというよりは、凄みを感じた日本人女性だった。
香港に入国!そして尖沙咀へ
いずれにせよ、結局機内で寝れないまま香港に到着した。大混雑を予想したイミグレーションは空いており、あっさり入国できた。1年振りに感じる香港の空気。空港の外に出るとA21のバスに乗り、安宿のある尖沙咀(チムシャーツイ)へ向かった。
車窓から見えた一年ぶりの香港の街は、やはり良かった。空港をあとにすると、山の緑が見え、しばらくするとエメラルドグリーンの綺麗な海が見える。その海上に浮かぶ船の数々と島を結ぶ美しい橋のアーチ。その横に目線を移せば、香港特有の高層マンション。風水の土地だから言うわけではないが、香港の街は「気」がいい気がして、バスに乗っているだけで幸せな気がしてくる。
怪しい安宿ビルの美麗都大厦
No.14の中間道を降りると、安宿が集まる重慶大厦(チョンキンマンション)が目の前にある。だが、今回の寝床は重慶大厦ではなく、すぐ近くにある美麗都大厦(ミラドマンション)をWEB予約していた。美麗都大厦に決めた理由は特になく、強いて言えば過去に宿泊したことのある重慶大厦との違いがほとんどなく、類似した安宿マンションも体験してみたかったからだ。
重慶大厦同様に複雑な構造の美麗都大厦の宿を迷いながら、何とかチェックインを済ますと、シャワーを浴びて海沿いのビクトリアハーバーへ足を運んだ。夕日を見るためだった。僕はその日1日の終わりに夕日が見られればそれでいいところがある。移動しかしていない今日は、それがぴったりだった。スターフェリーの乗り場から西の方角を望むと、夕日は輪郭を控えめにしながら消えていった。香港の夜が始まる。
香港に暮らす日本人
夕食は男人街で香港在住の日本人女性と共にした。彼女は日系のジュエリー会社で働く40代の女性で名前はOさんだ。Oさんとは僕が昔東京都杉並区で暮らしていた頃、とある飲み仲間に参加させてもらって以来の付き合いになる。
「来たよ〜、香港!」
笑顔で話す僕にOさんは一言。
「トランジットじゃん」
彼女は笑顔ではっきりモノを言うタイプだった。
Oさんとの食事を終えて男人街を後にすると、尖沙咀まで彌敦道を歩いて帰った。その道中ふと考えてみた。人間は欲を持たなければいけないこともあるが、欲を捨てることも大事なのではないか。特に年齢を重ねるほど、その言葉の重みは計り知れない気がする。これを突き詰めると仏教の教えということになるのだろうか。僕は明日ミャンマーへ行く。そのミャンマーは国民の85%が仏教徒だった。
美麗都大厦に近づき時計の針を見ると23時半を回っていた。酒が入ったこともあり、瞼が重くてとても眠い。ほぼ丸2日寝ていない身には堪える。宿泊する美麗都大厦の宿は6階だ。今日は野良猫の雄叫びはないだろう。
*この記事はOさんの協力によって書けた。また、記事の掲載にはOさんの許可を得た。1日もはやく体の回復を祈るばかりである。
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